さあ、スト高を探せ
どんよりと重い空気が部屋いっぱいに立ちこめていた。
必死に頭を働かせた。
まだなんとかなる。
そう自分に言い聞かせ、奮い立たせる。
落ち着け。
どの言葉を、どの順序で伝えたら、このピンチを乗り越えられるのか。
しかし焦って出てくる言葉に力はなく、彼女の心は動かなかった。
そして彼女は去っていった。
4年間付き合った彼女だった。
学生時代に友達の紹介というありふれたキッカケで知り合った。
実家が度を超えたお金持ちにもかかわらず、気どる様子はこれっぽっちもなく、屈託のない笑顔が素敵な子だった。
そして何よりそこが好きだった。
特に大きな波もなく、きっと結婚するだろうと思っていた。
そんな彼女はまるで最初から存在しなかったかのように去っていった。
どうしてなのか。
他に好きな人ができたのか、ずっと浮気をしていたのか。
本当の原因が何だったかは今もわからない。
結局人間は他人の心なんてわからない。
しかし、想像はできる。
明らかに自分に原因があった。
その感覚はあるものの、具体的に言語化ができない。
明かりの見えないトンネルのような悶々とした日が続いた。
ただ、今ではそれが言語化できる。
「非モテコミット」
その7文字に集約されていた。
偶然手に取った、藤沢数希氏の「僕は愛を証明しようと思う」にその言葉は載っていた。
そこに出てきたキーワードをもとにSNSで検索をかけてみる。
するとそこには、果たして現実なのか夢なのか、といったレベルのことを成し遂げる猛者がうじゃうじゃいた。
興味が沸いた。
ただ同時に見てはいけない世界を見たような気持ちも少なからずあった。
もしかしたらパンドラの箱なのかもしれない。
でも敢えて足を踏み入れて、楽しんでみたい。
まだ見ぬ世界を見てたい。
そして戦に戦を重ね、ある程度の戦闘能力を備えたい。
素敵な人に巡り会うために。
人生を変えてやるほど強い気持ちはないが、すこしだけ楽しくしたい。
さあ、スト高を探せ。